よみもの19
果樹のチカラで地域を変える~
「Wine&Cidre NAGAHAMA」の挑戦~
Wine&Cidre NAGAHAMA

滋賀県長浜市の観光地で有名な黒壁スクエア内に生まれた『ワイン』と『シードル』。琵琶湖を望む風土のなかで、『果樹を醸す』という新たな取り組みに挑戦しているのが、Wine&Cidre NAGAHAMAの田中渉太さんです。伝統ある地で、まったく新しいジャンルの醸造に挑む。その裏にはどんな想いがあるのでしょうか?
観光地で感じた喜びを、地元で形に
田中さんは、京都の老舗味噌メーカーで営業職として8年間勤め、全国各地を出張で訪れる日々を送っていました。
「地方の観光地を訪れるなかで、地元のお酒や特産品を楽しんでいる人たちの笑顔がとても印象的でした。そんな光景を見ているうちに、旅の楽しさとお酒をもっと身近に結びつけられるような仕事ができたらいいなと思うようになって。いつかは、自身の地元長浜でそういう楽しみを届けられる場所をつくりたいと考えるようになりました。」と、その時に芽生えた想いが、今の『ワイン』と『シードル』づくりにつながっているのだそうです。
「その後、地元のビアホールレストランで観光とお酒に関わる仕事を経験し、『ワインは難しくて、知識のある人しか楽しめない』というイメージがあり、『もっと自由に、もっと身近に、誰の目も気にせずワインを楽しめる』環境をつくりたいと考えるようになりました。」その中で、地域の特産品に強い魅力を感じ、地元長浜のブドウを使って地域のお酒をつくりたいという気持ちが湧いてきたそうです。
そして、世の中の働き方や暮らし方が大きく見直される中、これまで温めていた構想を実現するタイミングが訪れたと感じ、地元でのワインづくりに踏み出しました。地域の農家さんとも連携し、ブドウの栽培やワインとシードルの醸造に取り組むことができ、2022年11月にWine&Cidre NAGAHAMAをオープン。地元の果樹を活かしたワインやシードルを提供することで、観光と一体になったお酒を楽しめる場所にしたいという強い思いが込められています。Wine&Cidre NAGAHAMAのオープンは、田中さん自身が描いていた『もっと自由に、もっと身近に楽しめるお酒』のビジョンを実現するための第一歩となったのです。
長浜の気候が育む、
甘く濃厚なマスカット・ベーリーA
「長浜市は生食用のブドウ生産が非常に盛んな地域です。多様な品種が育てられており、その中でも、ワイン用に使用しているのは今荘ぶどう生産組合が育てているマスカット・ベーリーAという品種で、日本の気候に非常に適しており、酸味と甘味のバランスが良いブドウです。長浜では日照時間が短く、湿度が高いことなども要因し、他の産地に比べて少し酸味が抑えられ、甘味と旨味がより濃厚になることがストロングポイントとなり、そのため、私たちのワインはグラスに注いだときに香りが広がりやすく、フレッシュで飲みやすい仕上がりになっています。」
現在は、ワインづくりの段階でフレッシュ感とブドウ本来の特徴を活かしたつくり方を重視されていますが、将来的には樽での熟成にもチャレンジされる予定です。
歴史を受け継ぐ一杯
小谷城和りんごのシードル
「日本ではまだシードルって、そんなに馴染みのある飲み物じゃないんですよね。」と語る田中さん。しかし、世界に目を向ければ、りんごのお酒は古くから多くの地域で親しまれてきました。「ワインや日本酒と同じように、土地と気候が味を作る。それがシードルの面白いところです。」
シードルは、リンゴを使った発泡性のワインで、作り方は『リンゴを選別 → 破砕して果汁を取り出す → 果汁を発酵 → 瓶内で再度発酵させる → 炭酸を生み出す』
さらに、リンゴの皮などは現在醸造の場所をお借りされている長野の『林檎学校醸造所』と提携し、りんごレザー※として再利用する取り組みも行っています。
※りんごレザーとは、りんごの芯や搾りかすをすり潰して乾燥させたのち、パウダー状になるまで分解。そこに樹脂を混ぜることでりんごレザーが完成します。
シードルに使われる小谷城和りんごは、平安時代に中国から伝わり、薬用や観賞用として栽培されていましたが、明治以降、西洋りんごの普及で姿を消していました。小谷城和りんごが再び注目を集めたのは、2011年に放送された大河ドラマがきっかけです。ドラマの舞台となった長浜市湖北町の小谷城に関連するものを探していた地元の住民が、『城主の浅井長政が和りんごを食べていた』という古文書を発見したのです。
その後、地域の人々が『小谷城和りんごを復活する会』を結成し、りんごの復活を目指して活動を始めました。しかし、栽培の難しさや高齢化によって参加者が減少し、存続が危ぶまれていたところに、田中さんがその活動に加わり、2023年末には同会の代表に就任され、和りんごの保存と拡大に尽力されています。
小谷城和りんごを使ったシードルは、酸味が強く、辛口に仕上がります。特にカレーや揚げ物との相性が良く、爽やかな喉越しが特徴です。
「樹上完熟」の恵みを味わう
彦根梨シードル
彦根梨の最大の特徴は、『樹上完熟』一般的に市場に出回る梨は熟度が低い状態で収穫されますが、彦根梨は樹上で完熟させることで、より高い糖度と豊かな食味を実現しています。この方法により、甘みが引き立ち、梨本来の香りやジューシーさが感じられます。しかし、完熟した梨は日持ちが短いため、近隣の直売所を中心に流通し、地元で新鮮なまま提供されています。
彦根梨シードルは、彦根梨を活かしたみずみずしくて優しい甘みが特徴です。そのフレッシュな甘みがシードルにしっかりと表現され、口当たりは滑らかで飲みやすく、爽やかな風味が広がります。後味には心地よい甘さが残り、まるで梨そのものを味わっているかのような感覚を楽しむことができます。
甘口に仕上げたこのシードルは、軽い食事やデザートとの相性も抜群。地元の農家と連携し、品質の高い完熟梨を厳選して使用することで、滋賀の自然の恵みをそのまま瓶詰めしたような味わいに仕上げています。
ワインだけじゃない。果樹がひらく地域の可能性
「将来的にはワイナリーでの本格的なワイン醸造に力を入れていきたいと思っていますが、それまでの間にも、地元の果樹の魅力をもっと多くの方に知っていただけるような商品展開を考えています。」と田中さんは言う。
現在は、ワインを中心に販売を行っていますが、自社醸造所の完成までは、シロップやサイダーといったノンアルコール商品にも力を入れており、今後はさらにそのラインナップを充実させたい。
そして、特に『手に取りやすい形』として注目しているのが、お菓子などの加工食品です。
「自分が育てたリンゴを使ったお菓子の種類を増やしたり、ブドウやワインを活かしたスイーツなども展開していきたいですね。」
こうした果樹を活用した商品の開発は、単なる販売ではなく、地域の農産物の価値を伝える手段でもあります。将来的には、ワイナリーが完成したタイミングで、ワインづくりにより集中できる体制を整えることを見据えながら、今は地元の恵みを活かした幅広い商品開発に挑戦されています。
一杯のお酒に、地元の風土と人の想いを込めて。
Wine&Cidre NAGAHAMAの取り組みは、地域の恵みを未来へつなぐ新しい一歩です。
IMASHIGAは、そんな田中さんの挑戦と、果樹から広がる地域の物語をこれからも応援していきます。
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