よみもの29

老舗精肉店「肉のあさの」が挑む
“滋賀発”の本格生ハム

カルネ・ジャパン
(近江牛肉 総本家 肉のあさの)

口に入れた瞬間、黒豚の脂の甘みがゆっくり広がる——。
まるで熟成した旨みがほどけていくような味わいの生ハム、「Jamón de BIWAKO(ハモン・デ・ビワコ)」。

手がけているのは、琵琶湖の東側に位置する近江八幡市で約130年続く老舗精肉店「肉のあさの」です。
近江牛のイメージが強い同店ですが、今力を入れているのが加工品づくり。
中でも注目されているのが、黒豚を使った本格生ハムです。

生ハムといえば、スペインやイタリアを思い浮かべる人も多いはず。
そんな中、“滋賀で生ハム?”と思わず気になるこの名前。

その背景には、長年肉を扱ってきた職人だからこその技術と、
「滋賀から新しい食文化を発信したい」という想いがありました。

今回は、カルネ・ジャパン(近江牛肉 総本家 肉のあさの) へインタビュー。
お話を伺ったのは、株式会社カルネ・ジャパン 取締役の浅野拓土さんです。

約130年“肉と向き合い続ける”ということ

肉のあさのは、明治30年創業。
もともとは農耕牛の調教・斡旋をする家畜商「淺野畜産」として始まり、130年近くにわたって肉と向き合い続けてきました。

浅野さんは、長年続く理由についてこう話します。
「“おいしいお肉を届ける”というシンプルなことを、ずっと大事にしてきました。その積み重ねが今につながっていると思います」
精肉店として培ってきた“目利き”や“扱い方”は、現在の加工品づくりにも活かされています。

株式会社カルネ・ジャパン
取締役の浅野拓土さん

創業当時

「受け継ぐ仕事」に惹かれた理由

現在、取締役として加工品づくりに携わる浅野拓土さん。
実はもともと、家業とは別の道を歩んでいました。

以前は、漆器メーカーの営業職として勤務。
取引先の工房や職人を訪ねる中で、代々受け継がれていく“ものづくり”の世界に触れてきました。

「何代にもわたって技術や想いを受け継いでいく姿に、すごく魅力を感じていました」

そんな中で起きた東日本大震災。
“これから自分は何をしていきたいのか”を改めて考える大きなきっかけになったといいます。

その時に頭に浮かんだのが、自分の家業でした。
長く続いてきた精肉店の仕事。地域に根ざし、人の食卓を支えてきた仕事。

「自分も、この仕事をちゃんとつないでいきたいと思ったんです」
そうして浅野さんは、家業である肉のあさのへ戻ることを決意しました。

販売店証書

原点は、スペインで出会った“生ハムサンド”

ハモン・デ・ビワコ誕生の背景には、拓土さんの父である社長(浅野嗣夫氏)の原体験があります。

社長が若い頃、バックパッカーでスペインを訪れた際に食べた生ハムサンド。
その味が、今でも忘れられなかったそうです。

「生ハムって、こんなに美味しいんや」

シンプルながら、肉の旨みと脂の甘みがしっかり感じられる味わい。
その感動が、“いつか自分たちでも本格的な生ハムを作りたい”という想いにつながっていきました。

そして生まれたのが、「ハモン・デ・ビワコ」です。

名前の由来は、スペイン語で生ハムを意味する「ハモン」と、生ハムの原木のシルエットが滋賀の象徴・琵琶湖の形にも見えたことから、「ハモン・デ・ビワコ」という名前が生まれました。
また、“滋賀から新しい食文化を発信したい”という想いも込められています。

株式会社カルネ・ジャパン
社長 浅野嗣夫氏

熟成されたハモン・デ・ビワコ

熟成で引き出される脂の甘み

ハモン・デ・ビワコで使用しているのは、九州産の黒豚と滋賀県産豚。
中でも黒豚は、脂の甘みと旨みの強さが特徴です。熟成させることで、その魅力がさらに引き立っていきます。

生ハムづくりは、想像以上に繊細な世界。塩加減や温度、湿度など、少しの違いでも仕上がりが変わってしまうそうです。
「熟成中はこまめに状態を確認しています。時間をかけることで、肉の旨みがゆっくり変化していくんです」

一般的な“塩気の強い生ハム”とは違い、ハモン・デ・ビワコは、肉本来の旨みや脂の甘さをしっかり感じられる味わいが特徴。
“お酒のおつまみ”としてだけでなく、料理と合わせて楽しめる生ハムを目指しているといいます。

温度管理を徹底して熟成

ワインにも、日本酒にも地元の食卓に寄り添う味

おすすめの食べ方を伺うと、浅野さんは「まずはそのまま味わってほしいですね」と笑顔で答えていただきました。
薄くスライスした生ハムを、まずは一枚。
口に入れると、黒豚ならではの脂の甘みと熟成香がゆっくり広がります。

さらに、チーズやフルーツと合わせたり、サラダに添えたりするのもおすすめ。
ワインはもちろん、日本酒との相性も良いそうです。

「滋賀は日本酒文化も根強い地域なので、“日本酒と生ハム”という楽しみ方も広がっていけば嬉しいですね」

肉のあさのからのメッセージ

「ハモン・デ・ビワコを通して、“滋賀にもこんな食文化があるんだ”と感じてもらえたら嬉しいです」
そう話してくださった浅野さん。

長年、近江牛と向き合ってきた老舗だからこそ、肉の旨みをどう引き出すか、どう届けるかを大切にしてきました。
その技術と経験を活かしながら挑戦しているのが、この“滋賀発”の生ハムづくりです。

ワインと合わせて。
日本酒と一緒に。
あるいは、いつもの食卓で気軽に。

特別な日だけではなく、日常の中で楽しんでもらえる存在になってほしい。
そして、生ハムをきっかけに滋賀の食の魅力をもっと知ってもらえたら——。

そんな想いを込めながら、今日も一本一本、丁寧に熟成を重ねています。

IMASHIGAからのメッセージ

今回のお話の中で印象的だったのは、単なる“商品開発”ではなく、「受け継ぐ」という言葉でした。

先代がスペインで出会った生ハムの記憶。
代々続くものづくりへの憧れ。
そして、家業を未来へつなごうとする想い。

ハモン・デ・ビワコには、そんな時間や記憶まで熟成されたような魅力がありました。
「特別な日に食べるもの」というより、普段の食卓でも気軽に楽しんでほしい。
ワインや日本酒を片手に、滋賀で生まれた“新しい熟成の味”を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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